組織強化・分析

途上国を支援する上で、その国の組織の強化を図ることが極めて重要です。例えば、日本の農業技術を途上国に移転しようとする場合、農業振興・普及を担当する行政機関・研究機関やNGOなど受皿となる組織に技術を適正に伝え、普及・伝承してもらうことで、大きな効果を生み出すことができます。そのため、パートナーとなる相手組織のことをよく理解して、組織を強くすることは国際協力の重要な課題となっています。組織強化の対象は分野を問いません。保健分野であれば病院・診療所や住民組織やコミュニティ、農業であれば生産者組合など様々な組織が対象として想定できます。適材適所では、オランダのMDFというコンサルタント企業が開発したInstitutional Development and Organizational Strengthening (ID/OS)という組織強化・制度開発ツールを活用して、社員が従事する調査やプロジェクトで組織分析や組織強化の提案などをおこなっています。

 

 

また、会社としてもID/OSを活用できる社員を増やすために、MDFのコンサルタント養成研修を受けた社員による社内研修と実践経験の共有を行っています。2017年8月には、MDF(スリランカ)の研修インストラクターを日本に招き、ID/OSの実践のための集中研修を社内研修として実施しました。研修では統合組織モデルやSWOT分析、Strategic Orientation Matrix等の様々なツールについて学びました。また集中研修後にID/OSの経験豊富な社内のシニアコンサルタントを講師として、実際の活用事例の紹介と質疑応答の機会を設け、さらに理解を深めました。研修に参加した社員からは、同ツールは案件形成や評価分析、プロジェクトマネジメント等様々な業務で活用可能であるとして大変好評であり、それぞれ担当業務への活用可能性を検討し始めています。

ID/OSは8つの組織分析・強化ツールがあり、夫々の組織の特性や強化ニーズに合ったツールを選択・活用します。また、実施方法は多くの場合、事前に組織についての基礎的な情報を収集した上で、組織のメンバーや重要な関係者を集めてワークショップを開催し、様々な角度・視点から組織を分析して、その結果をもとに組織強化策を検討します。

 

 

最近のID/OS活用事例としてタイで障がい者への支援を行っているNGOの組織分析と組織強化の提案の経験を紹介します。そのNGOは行政機関によるサービスが行き届かない地方を中心に、障がい者に車いすを提供することで大きな成果を上げてきました。しかし、近年、行政サービスが向上する中で、NGOが従来行ってきたサービス提供の重要性が相対的に低下しており、新しい方向性を打ち出す必要が生じていました。そのため、NGOスタッフと2日間のワークショップを開催して、みずからの組織を自己分析して、有効と思われる障がい者へのサービス提供の方向性を検討しました。その結果、行政では対応できていない専門的なサービスの提供、行政サービスの弱い地域へ対象地域をシフトすること、学校や教育委員会と連携したインクルーシブ教育の推進などを新たな組織戦略として位置づけることを検討しています。

実施機関の能力を把握し事業の持続性を検討するために、組織分析と制度開発の視点は不可欠です。このため、適材適所では社員全員が組織分析ツールを有効活用できるよう人材育成を進めています。