政府開発援助(ODA)の世界では、プロジェクト形成・運営・評価といったら、何か特別なことのように取り扱われ、そのためのツールやスキルに焦点が過度に当てられたり、その一方で軽視されているケースもあり、両極端だと感じることがあります。民間企業では、(業界や職種にもよりますが)新入社員として即たたき込まれるのが、企画、実施管理、総括(評価)の3つであり、総括結果から次年度の企画を立案し予算を取る-このサイクルがごく当たり前であり、これなくしてはビジネスは成り立ちません。何かをしようと思えば、このサイクルは当たり前の流れです。ODAの事業も然りです。では、なぜこの事業実施の流れにいおて自然であるべきプロセスに長年焦点が当てられているのでしょうか。
それは、このサイクルにおいて(日本の?)ODAの特徴、あるいは面白といえる点があるからだと思います。それは、ODA事業では、プロジェクト形成、運営、評価に関わる人が異なるケースが多い点です。おそらく民間企業が実施する事業では、事業サイクルを通じて同じ人材あるいは同じ部署が一貫して深く携わっていることが多いはずです。ODA事業で関わる人が替わる理由は様々だと思いますが、概ね人事異動により担当者が交替する、事業運営は外部人材に委託される(立案した組織は監理者となる)、評価は別の人材・組織に委託される(現時点でその体制は変わりつつあるので、今後は不明ですが)などが考えられます。だからこそ、人が交替しても同じ言葉で事業を語れるように事業をマネジメントすること、つまり誰が見てもわかる事業の立案、実施、評価の遂行が重要だと私たちは考えています。
誰がみてもわかる事業の遂行のために日本のODAではプロジェクト・サイクル・マネジメント(Project Cycle Management:PCM)というツールが主に活用されますが、ツールはあくまでもツールです。それを使いこなすことが重要です。適材適所のコンサルタントは、プロジェクトの形成(形成段階でも主に具体的な計画策定)、運営、評価に携わっていますが、常に事業内容が明確になるように、業務を遂行することを心がけています。
プロジェクト形成では、なぜ今、このプロジェクトを実施すべきなのか、つまり「プロジェクトを実施する意義」を重視して、事業内容を計画します。誰がみてもこのプロジェクトは何を目指して、何をしようとしているのかということがわかるように事業を組み立てます。
プロジェクトの運営では、プロジェクトの管理ツール(PCM手法でも、ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャーのような他のモニタリング手法でも何でもよいのですが)を活用しつつ、プロジェクトの目的を達成するために現場で専門家として事業運営に携わっています。事業を実施したことにより、事業効果を生み出せているかを常に意識しています。
プロジェクトの評価では、主に評価コンサルタントとして、プロジェクトの目標が達成される見込みを多面的に検証し、今後重点を置くべき活動等を提言としてまとめ、評価結果から教訓を導きます。
適材適所では、これまで多くのプロジェクト形成・運営・評価に携わってきました。詳しい事例は「私たちの仕事」や「業務実績」をご参照ください。
どの業務を実施しても常に学びはあります。よりよいプロジェクトの形成・運営・評価を実現すべく、切磋琢磨する毎日です。