国際協力で重要なのが「すべての人々が恩恵を受ける」こと。2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、「誰ひとりとして置き去りにしない (no one will be left behind)」を基本理念に、インクルーシブな開発を目指しています。女性や子ども、高齢者、障害者、貧困者、先住民、移民など社会的弱者と称されるすべての人々が開発の恩恵を受けることが重要です。
世界保健機構(WHO)の推計によれば、世界の全人口の15%が障害者であり、そのうち80%が開発途上国に住み、特に農村部に居住していると言われています。また、障害者は、差別や偏見などから教育・雇用へのアクセス率が低いことから、貧困に陥りやすいと言われています。
適材適所では、障害と開発に焦点を当てたプロジェクトの情報収集や評価、コンサルティング・サービスを提供しています。この分野では、障害に特化した専門知識や実務経験だけでなく、開発における分野横断的な視点が必要になります。つまり、ジェンダーのようにすべての開発の取り組みにおいて障害の視点を入れることが重要です。
国際協力機構(JICA)へのコンサルティング・サービス
適材適所では、2011年から以下のとおり、JICAに対して「障害と開発」分野のコンサルティング・サービスを提供してきました。
- 2011年~2015年:JICA本部社会保障課のインハウス・コンサルタント派遣。「障害と開発」の課題別指針の策定に貢献
- 2015年:インドネシアの障害政策に関する情報収集・確認調査
- 2016年:シリア難民障害者に関する情報収集・確認調査
- 2016年:技術協力プロジェクト「ウランバートル市における障害者の社会参加促進プロジェクト」への専門家(チーフアドバイザー)派遣
- 2017年:エジプト・情報アクセシビリティの改善による障害者の社会参画促進プロジェクト(フェーズ1)詳細計画策定調査(評価分析)
- 2020年:国別障害情報更新調査(ウガンダ、エジプト、キルギス、ベトナム、マラウイの5カ国を担当)
- 2022年:エジプト・情報アクセシビリティの改善による障害者の社会参画促進プロジェクト(フェーズ2)詳細計画策定調査(評価分析)
このエジプトのプロジェクトは、日本のDAISYマルチメディア図書制作の技術を、エジプトの情報技術省や教育省に伝えるのが目的です。障害者の教育や就労機会を拡大するには、紙に印刷された図書・文書を読むことが困難な人にとって、図書などを読みやすい形式にすることによって、学習する機会や仕事に就く機会、社会参加をする機会を拡大することが期待されています。
その他の組織へのコンサルティング・サービス
2021年と2022年には、障害と開発分野において、新しい組織へのコンサルティング・サービスを提供しました。
【日本財団】
2021年には、日本財団の障害者リモートワーク・ワーキンググループの活動の経験をパンフレットにまとめるプロジェクトに従事しました。この日本財団の活動の背景には、国内外の動向変化があります。新型コロナウイルスの感染拡大にともない、多様で柔軟な働き方が拡大し、テレワークによる障害者雇用が進むことで、障害者の就労機会の拡充が国内外で期待されるようになっています。また、企業の経営層は、ダイバーシティ・インクルージョンの機運が高まっていると自覚し、さまざまな策を講じてきています。ダイバーシティは、企業に活力を与える要素の一つとして、あるいは、企業として50年後、100年後存続し続けるための、企業の競争力を左右する重要な要素として捉えられています。このプロジェクトを通じて、障害者インクルージョンは、ダイバーシティマネージメントの一つに過ぎないことを改めて感じました。
【アジア開発銀行(Asia Development Bank)】
2022年に5~6月には、適材適所のコンサルタントが、アジア開発銀行(Asia Development Bank)の障害プロジェクトを国際個人コンサルタントとして請負いました。女性への家庭内暴力防止プロジェクトの一部である、女性障害者への暴力防止に貢献するピア(仲間)を育成するプロジェクトに関与します。障害当事者を暴力防止に貢献するピアとして育成し、犠牲者に寄り添って、現在の暴力犠牲者へのサービスの改善を図ろうとしています。
障害と開発のこれまでの実績事例
従事経験国例 | アメリカ合衆国、インドネシア、ウガンダ、エジプト、キルギス、シリア、スイス、タイ、フィリピン、ベトナム、マラウイ、ヨルダン、モンゴル |
障害分野のテーマ |
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コンサルティング・サービス |
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障害者も同じように恩恵を受けるインクルーシブな開発の実現に少しでも貢献できるように、今後も障害と開発に関するコンサルティング・サービスを提供して行く予定です。