2024年12月から弊社がJICAから委託を受けて実施した「全世界(広域)障害者就労案件レビュー調査」の結果報告と、対象4カ国間の知見共有を目的とした標記ウェビナーを、2025年11月19日にJICA主催で開催しました。
本調査は、JICAが2004年から2025年にかけて実施してきたマレーシア、モンゴル、ヨルダン、スリランカの4カ国における障害者のインクルーシブ就労*支援について、成果と課題を総合的に分析したものです。本調査の分析では、4カ国すべてで障害者の就労が着実に進んでいることが確認されました。複数国で共通する成功のポイントとして、丁寧な制度設計や支援人材の育成、企業とのパートナーシップ、多様な機関との連携、そして障害の社会モデルへの理解を広げる取り組みなどが挙げられ、それらがインクルーシブ就労を進めるうえで重要な要素であることが明らかになりました。
本調査結果は、今後のJICAの障害と就労分野だけでなく、その他の障害と開発分野の案件の実施や形成に活用される予定です。
本調査ではオンラインでの聞き取り調査や現地調査を通じて、4カ国及び日本から非常に多くの方々にご協力頂いたこともあり、当日は主に調査参加者を中心に約100名の皆様がオンラインで参加されました。ウェビナーでは4カ国5言語の同時通訳(基本言語:英語)に加え、合理的配慮として手話通訳と文字通訳を提供しました。多言語・多様なアクセシビリティ対応を伴うウェビナーは弊社としては初めての経験で大変緊張いたしましたが、無事に開催することができました。
ウェビナーでは、弊社コンサルタントの齊藤と石飛が、1) 4カ国の国別調査結果、2) 横断分析結果、そして3) 今後の障害と就労案件のための提言を発表しました。続いて、調査対象国のマレーシア、モンゴル、ヨルダン、スリランカから、それぞれ以下のテーマでご発表頂きました。
- ヨルダン:「障害当事者団体による就労促進活動、ピアカウンセリングの活用」
- マレーシア:「NGOによる就労移行支援プログラムと好事例」
- モンゴル:「職業訓練校による障害者の就労支援」
- スリランカ:「政府による労働・福祉連携プログラムと他国への提言」
各国の登壇者の皆様からは、現場で日々向き合っている課題や、様々な工夫についてお話があり、改めて多くの気づきを得ることができました。
質疑応答の時間では、事前の参加登録時に寄せられた質問についてJICA本部よりご回答いただくとともに、ジョブコーチネットワークの創設者でもあり、4カ国のJICAの障害と就労案件に長年携わってこられた大妻女子大学の小川浩教授から、各国の障害者の就労支援に向けた関係者への温かい励ましのコメントをいただきました。
ウェビナー開催後、登壇者や参加者からは、「こうした学びの機会は本当に貴重なので、ぜひ今後も続けてほしい」といった声が寄せられました。
【弊社所感】
今回の報告会を通じて改めて感じたのは、インクルーシブ就労は、多様な分野の関係者との連携、そして現場で働く人々の熱意や創意工夫によって支えられているということです。各国の皆様の報告を聞きながら、限られたリソースの中でも「何ができるか」を真剣に考え、着実に実践されている姿勢が伝わり、大きな刺激を受けました。また、今回のように多言語・多国籍の参加者が一堂に会し、それぞれの経験や知見を共有する場の重要性も実感しました。国は異なっても共通する課題は多く、互いに学び合える点が非常に多くあることを再確認しました。弊社としても、今回の調査で得られた知見を今後の事業に活かし、より実効性のある障害と開発分野の取り組みに貢献していきたいと考えています。
参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました。
なお、日本語による障害者就労案件レビュー調査の報告会は、来年1月に開催予定です。ご関心のある方はぜひご参加ください(詳細はJICAウェブサイトにて告知予定です)。また、本調査の報告書(日本語・英語)も、今後JICAウェブサイトにて公開予定です。
![]() ウェビナーの様子 |
![]() ウェビナーのまとめを行う司会(齊藤) |
*インクルーシブ就労:「インクルーシブ就労」とは、障害者が障害のない同僚と同じように、競争のある一般の労働市場で働き、同じ福利厚生やキャリアの機会を得られることを指します。インクルーシブ就労の目的は「障害を理由に質の高い雇用機会から排除されたり、分離されたりしないようにすること」、また、「障害者が職場で必要な配慮や支援を受けながら、障害のない同僚と同じ条件で仕事や福利厚生を利用し、成功するための環境を整えることを保障すること」です。
参考:Inclusive Disability Employment ウェブサイト “Inclusive Employment”
https://pfp-idefellowship.org/about-fellowship-in-us/inclusive-employment/



