【背景】
このプロジェクトはマラウイのリロングウェ市の無収水削減に関するリロングウェ水公社（Lilongwe Water Board: LWB）の能力強化を目的としている。LWBは1947年にマラウイ政府によって設立された半官半民の公社で、マラウイ市内および周辺地域の98万人に対して給水している。

さて、ここからはプロジェクトの裏話（？）、報告書の類いでは読めない、「技プロのちょっとした面白話」をしていこう。

総じて、LWB職員の能力は高いと日本人専門家チームは判断している。彼らの何がすごいのかを述べてみたいと思う。

とにかく有言実行！そしてやりきる！
どこの国でも会議は開かれる。しかし、会議の場では、あれこれ意見や感想を述べて、「じゃあこれで終わりです！」という会議が多いと思う。特にそれぞれの所感を述べて、「そうだね〜」と、なんとなく情報を共有してみんな満足。そんな会議に出くわしたら、間違いなく「ええ〜ほんまかいな？」って突っ込みたくなる。私は新卒で就職した会社が当時では結構先進的な民間企業だったため、最初はこうした会議について非常に違和感があり、物事を決めない会議や目的がはっきりしない会議には脱力感を感じた。一時期、会議の多い会社は潰れる！というトピックスがビジネス書で流行ったぐらいである。ODA関連で支援するカウンターパート組織の会議も、こうした感じの会議が多いように思っている（特にアジア諸国・・・違っている国やカウンターパート機関があれば単に私の無知ということでご容赦ください）。

LWBの会議は、私が所属していた会社で開かれる会議よりもすごい。議題がはっきりしている上に、会議で決めることが明確、そして最後には必ず、「誰が、いつまでに何をするのか」を決める。そして、すごいのが、決めっぱなしにしないで「あれはどうなった？」と必ずどこからかフォローが入る。「ああ〜やろうと思っていたのに・・・」と宿題に取りかかろうとしていて、親に「宿題やったの？」と突っ込まれる子どもの気分である。どこまでも追いかけてくるLWBである。決めたことは何が何でもやる！という精神が職員に根付いている。おそらくそうでない職員は、だんだんと窓際（閑職）に追いやられ、辞めていくような雰囲気である。

会議風景

LWBがこうであると、日本人専門家チームもウカウカしていられない！ぼーっとしていたら置き去りにされ、そのままおさらば状態になる（実際にLWBを支援していた他ドナーがその憂き目にあった前例もある）。できないヤツは要らないのである。ただしLWBとて鬼ではない。失敗を活かして前に進もうと努力する人は正当に評価する文化がある。誰にでも失敗はあるので、専門家としてプロフェッショナルであると共に、常に学び、前に進もうとする姿勢が大事だとつくづく感じる。

有言実行が浸透しているのは、トップがその姿勢で仕事に臨んでいるからというのもある。LWBには理事会が設置されており、組織の意思決定はこの理事会で行われるが、給水事業の全面的な責任はCEOが担っている。LWBのCEOはこの世で一番怖い人だと、私は真面目に思っている。マラウイ国内の水公社や関連省庁を対象とした第1回国内ワークショップが2021年6月に開催され、そこで提言のようなコメントがいくつか出された。普通、そういう場で出た提言は、議事録等にはまとめられるかもしれないが、大概、その後は置きっぱなしである。つまり言いっぱなし！ところが・・・その3ヵ月後に、CEOから「あの時の提言のフォローアップしないとね。今度のJCC（合同調整委員会）で発表しよう！」とご発言が・・・。しかもJCC開催の10日前！！！しかもLWBだけでなく他の水公社や省庁分もフォロー必要？？？ひえええ〜。もう現場は大慌て、ワラワラ状態。恐ろしい御仁である。でもそのご発言と姿勢はとても正しい。ごもっともなのである。ぐうの音も出ない・・・。はい、仰せのままに！

第2回国内ワークショップでは、不適切な提言に振り回されたくないので、提言は本当に必要なものしか受け付けないように議論をコントロールし、最後のラップアップセッションでの議論の取りまとめ方に細心の注意を払った。そして最後のラップアップを執り仕切ったのが、我らがカウンターパートの中心人物。見事な執り仕切りで拍手喝采。だが！そのラップアップの内容が怖すぎる。トップの姿勢は部下にも伝染するのか？？？「ワークショップの各セッションで議論した今後の活動や新しい取り組みを、定期的にモニタリングして会議で進捗を報告しよう、次の国内ワークショップでは、1年の活動の総括をしよう！！！」と声高に締めくくった。かっこいい〜！いやいや、なんかまた仕事増えてない？？？知ってますか？ここって有言実行の世界なんですよ〜。し・か・も、仕事の量が増えるだけでなく、なんとなく難易度も上がっているような気がするのは私だけ・・・？人生これ修行なり、と心の中でつぶやいた私でした・・・。